夢酒、健さんとお竜さんにしびれる

 やってくれますねぇ、NHKさん。
 BSの「プレミアムシネマ」で健さん特集ですよ。
 それも、任侠ものがズラリ。
 見て下さいよ、このラインナップを。

  2月9日(月)  『網走番外地』(1965年) ・・・済
  2月10日(火) 『緋牡丹博徒 花札勝負』(1969年) ・・・済
  2月16日(月) 『昭和残侠伝 死んで貰います』(1970年)
  2月17日(火) 『単騎、千里を走る』(2005年・中国)

 『単騎…』は別として、NHKが「番外地」とか「花札勝負」とか「死んで貰います」とか、もうね、悶絶ものですわ。
 民放は何やっとるんじゃ!(笑)
 
 で、すでに上の2本は見ちゃいましたけど。いやもう大満足です。
 実は『網走番外地』は昔何べんも見たし、DVDも持ってたりして、主題歌は夢酒の隠れた愛唱歌なのであります。カラオケで歌ったこともあります。若い衆はポカンとしてましたけどね。

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 改めて見ると、冒頭流れるのは「はるか はるか彼方にゃ オホーツク…」。これ、カラオケでは2番に入ってます。そして劇中、「ひとり ひとり暮らしのお袋に 極道重ねた罰当たり すまぬすまぬと手をついて 涙で祈る番外地」。ああ、当時全共闘の諸君はこの箇所を歌って涙したもんだ。あれ、待てよ。お袋さんは再婚相手のDV亭主や健さんの妹と暮らしていたはずだが・・・。

 こんなすごい歌詞もあります。

  ひとざと ひとざと離れた檻の中
  この世に 地獄があろうとは
  シャバのネスコにゃわかるまい
  知らなきゃ おいらが教えましょう

 雪中の伐採作業をしている場面で流れます。死人が出てもおかしくないような劣悪環境です。実際、明治時代には網走監獄の囚人たちによって道路が作られ、労役の苛酷さに死者が続出したと言われます。
 夢酒は「ネスコ」の意味がわからなかったんですが、どうも「あの娘」ってことのようです(違ってたらすみません)。
 もともとその筋の人たちが歌っていた伝承歌ですから、いろんなバージョンがあります。隠語が使われているとか、犯罪者を美化しているとか、変な理由で放送禁止になったこともありました。そうなるとなおさら歌いたくなるのが人情というものですよね。

 健さん若いです。「渡世の義理で」とか言ってますけど、青臭さが抜けていません。のちの任侠ものと違って、結構軽いところもあります。裸踊りをやって懲罰食らったりします。でも、その後はまじめにお務めを果たして、一日も早く病気の母親や妹のところに帰りたいと思っています。仮釈放も間近です。ところが周りの囚人たちが起こす脱走騒ぎに巻き込まれて、追われる身になってしまう。健さん、ちっとも悪くないのに。

 モノクロ映画で、屋外は全編雪の中(回想シーン除く)。予算の都合かなんかでカラーにできなかったみたいですが、これがかえって映像効果を上げています。トロッコでの逃亡・追跡シーンや、手錠の鎖を切るために線路の中に横たわって機関車の通過を待つシーンなどは、今でも手に汗握る名場面です。
 ただ、丹波哲郎さんの保護司?がいい人過ぎるのと、連鎖の健さんを脱走に引きずり込んだ悪い囚人(南原宏治さん)が、最後にあっさり自分の罪を認めてしまうのがちょっとな。昭和残侠伝なら、とっくに叩っ斬られてます(笑)
 ま、見終わってスッキリして帰るのが当時の娯楽映画ですから、めでたしめでたしということでよろしいかと。

 
 そうそう、8人殺しの「鬼寅」を演じる嵐寛寿郎(通称アラカン)さんがとても渋くてかっこいい。そのオーラには、健さんも食われそう。次の『緋牡丹博徒』では、名古屋の任侠界を仕切る親分さんになって、貫禄の再登場です。
 


 ということで、『緋牡丹博徒 花札勝負』、行きます。

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 このシリーズは、実は夢酒は見てないんです。それでも藤純子(現富司純子)さん自ら歌う主題歌は、ちゃんと覚えている。いかにヒットしたかということですね。
 
 『網走番外地』の時代背景は不明ですが、こちらは明治中期です。
 父の仇を探し、「娘ざかりを渡世にかけて」全国を旅する、姓は矢野、名は竜子。またの名を「緋牡丹のお竜」さんのお話でございます。藤純子さんは当時まだ23~24歳。お父上は東映の名プロデューサーだった方で、いわば身内の?お嬢様が、色香立ちのぼる女侠客を見事演じたわけです。凛とした立ち姿や所作が育ちの良さを感じさせるのは、そのせいでしょうかね。

 本作はシリーズ3作目ということで、お竜さんは名古屋へやってきます。わらじを脱いだのは「西の丸一家」で、ここの親分さんが嵐寛寿郎さん。任侠道の鑑みたいなお人でござんす。

 さて、西の丸一家は熱田神宮の勧進賭博を控えて、悪いヤクザの金原一家(親分は小池朝雄さん)と対立し、ピリピリしております。「緋牡丹のお竜」と聞くと、子分衆はいきり立ってお竜さんを追い返そうとします。「緋牡丹のお竜」を名乗る女が浜松で賭場荒らしをして逃げているとの情報が伝わっていたからです。
 お竜さんは兄貴分と慕う熊虎親分(若山富三郎さん)の添書きを持参しているのですが、受け取っても貰えません。これほどの別嬪が堂々と口上を述べているのに、こいつらタワケかと思います。そこへアラカン親分が出てきて、熊虎のあまりにも下手くそな添書きを見て本物だと認めてくれるんです。
 こうして西の丸一家に身を寄せることになったお竜さんがニセお竜を捕まえると、なんと映画の冒頭で助けた盲目の少女の母親だったりして。「イカサマはいかんとよ」と言いながら、身の上に同情したお竜さんは、こっそり助けてあげるんですね。
 

 そんなこんなで話が進む中、スタートから30分ほど過ぎたところで、お竜さんは金原一家からの帰り道、堀川端で折り目正しい渡世人と出会います。
 ここで場の空気が一変します。お待ちかね、健さんの登場です。
 折しも雨が降っていて、健さんはずぶ濡れです。金原一家を訪ねるという健さんに、お竜さんは傘を貸すんですが、指と指が触れた瞬間、二人の間に通じ合う何かが芽生えます。もうね、そのシーンの艶っぽさと言ったら。しびれる場面です。でも、健さんは敵方の客分。さて、いったいどうなることやら。

 明治の「名古屋驛」が笑っちゃうほどショボかったり、お竜さんが片肌脱いで緋牡丹の彫り物を見せてくれなかったり、不満な点はいくつかありますが(笑)、かたくなに己の価値観に従う男たち、「女」を捨ててそのような世界と渾身切り結ぶヒロイン、そこに類型化を超えて描かれる様式美。堪能させて貰いました。
 健さんは特別出演ということで、あくまでお竜さんを立てる役どころ。でも、そこにいるだけで場面が引き締まる。圧倒的な存在感です。そして、最後にいいとこ持ってっちゃいましたね。







 『網走番外地』も『緋牡丹博徒』も、いろんなモノを詰め込みながらも流れるような筋運びで、中だるみなく、しっかり楽しめます。余計な演出や無駄なセリフがないのが好感です。

 さあ、来週は名作中の名作、『昭和残侠伝 死んで貰います』 だ。背中(せな)で呼んでる唐獅子牡丹!
 どうぞお見逃しなく。


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この記事へのコメント

sahokokko
2015年02月17日 18:01
広小路様!
これはまさにわたくしのための記事と思われます(←また自意識過剰)。

健さんの映画はわりに録画していますが、生活に追われており、また、子どもと一緒に観て大丈夫かとか考えたりして(艶かしい場面とか)、観るのが追いついておりません。子ども鑑賞お勧めレベルなども判定していただけるとありがたいです。
↑不躾な申し出、お気になさらず。

これまで観たところでは、「幸福の黄色いハンカチ」、亡くなったすぐの週末でしたが、録画予約をし忘れており、途中から観ましたが、充分に分かりやすいお話でした。「駅」は、話としては面白かったけれど、後味が寂しすぎ。「居酒屋兆治」は玄人好みですかね。「君よ憤怒の河を渡れ」は面白かったですね。中野良子(この人の演技は初めて見ましたが)もよかった。第一課の刑事が途中から共感というか共犯というか、同志のような感じになっていくところも面白かったし、馬に乗るところは実写としても、海面すれすれのセスナ機はさすがにスタントマンですかね?エンターテイメントとしてとても面白かったです。「緋牡丹博徒」は録画しそこねました。「網走番外地」はまだこれから。
当面の楽しみが尽きませんです。
夢酒
2015年02月18日 01:18
>sahokokkoさん
あなたと健さん談義ができるとは、望外の喜びでございます。
もちろん、あなたのために書きました(笑)

子ども鑑賞お勧めレベルですか。また難しいことを(笑)
「黄色いハンカチ」は山田洋次ワールドですし、OKでしょう。
「駅」は好きな作品です。おすすめしたいですが、ちょっと重いので、お子さんにはキツいかも知れませんな。女優さんはみんな素晴らしいです。
「兆治」大好きです(笑)。でも、さよ(大原麗子さん)の情念について行けるか?
「憤怒」は突っ込みどころのスケールが大きすぎて、今どきの若い子は笑っちゃうと思いますよ。夢酒はこの作品で中野良子さんのファンになりました。あとでヌードシーンが吹き替えだと知って、愕然としましたけど(笑)

健さん映画には、いわゆる「艶かしい場面」はそれほどなかったように記憶してます。そういうのって、健さんはあまり得意ではなかったイメージですし。
任侠ものにしても、切った張ったに明け暮れているわけではなく、ドスを片手に殴り込みは最後の最後だけです。実際にはあり得ない世界を描いていて、むしろ叙情性に溢れています。一種のファンタジーともいえます。ただし、結構強烈な世界なので、合わないと無理かな。

BSの「昭和残侠伝 死んで貰います」観ました。後ろから斬られて、うわっと思ったら、着物の背中が割れて、唐獅子牡丹が鮮やかに。「待ってました!」と映画館は熱狂の渦。遠い昔を思い出しましたよ(笑)

「緋牡丹博徒 花札勝負」を録画しそこねたあなたのために、予告動画を貼っておきました。健さんとのシーンは、出会いではなく、別れの場面です。
2015年02月18日 22:44
任侠世代ではないんですよね。「遥かなる山の呼び声」とか「ブラックレイン」とか「ミスターベースボール」はレーザーディスクで買いました。でも薄い俄かファンです。

文太さんのトラック野郎もちょこちょこ放送されてますね。これも好きで子供の頃よく見てました。
夢酒
2015年02月18日 23:52
>オレドラさん
任侠世代の夢酒でござんす。というか、一生懸命ついて行った世代です。
やはり健さんは特別なヒーローでした。晩年はなんだか「いいオジサン」になっちゃったなという感じがしていましたが、それはファンのわがままですよね。
「ミスターベースボール」はドラゴンズファンとして当然見ました。星野監督がモデルというやつね。今思うとなんだかな。
健さん映画で好きなベスト3は、任侠以外では、「居酒屋兆治」、「駅」、「冬の華」(これは任侠風味あり)かな。地味目の降旗監督作品が好みみたいです。
文ちゃんは「実録もの」のイメージです。すいません。